『 海神 ( わだつみ ) の ― (2) ― 』
ふ〜〜ん♪ ふんふん♪ ・・・・・
「 あ きこえる〜〜 ざ〜〜〜ぶ って! 」
サトナカエミ は 貝殻を耳に当ててにっこり。
「 ふふふ〜〜〜 今日もエミの海はおだやかで〜〜す 」
カチャ カチャ カチャ ふんふ〜〜〜ん♪
ランドセルを鳴らし ハナウタを歌い ご機嫌ちゃんだ。
えへへ〜〜〜
波のおと ってだいすき〜〜〜
エミは海がすき〜〜〜〜♪
パパも海がすき〜〜〜
だ〜から エミは パパが好き♪
らっ らっ ら〜〜〜
パパ 明日 帰ってく〜〜るよ〜〜
らっ らっ ら〜〜〜♪
「 たっだいまあ〜〜〜 」
パタン。 玄関のドアを開けると ―
「 お帰り エミ。 ね 一緒に来てちょうだい。
パパが怪我をしたのですって 」
ママが珍しく強張った顔をして 待っていた。
「 ・・・ あ ママ ・・・? 」
・・・・?
あれ これって ― いつかと おなじ??
「 エミちゃん! しっかりして。 聞こえた? 」
大きな目をまん丸にしている娘に 母は心配そうな顔になった。
「 あ ・・・ う うん ・・・ きこえた 」
「 そう? よかったわ。 さ 今から病院にゆくから。
エミちゃんも来て。 ランドセル、置いてきてね 」
「 はい ママ! 」
たたたた −−− エミは子供部屋へ駆けていった。
「 ― あれ?? ここ びょういん だあ? 」
エミは母のクルマを降りて 少し目をぱちぱちしていた。
「 ?? 病院にゆく っていいましたよ? 」
「 え あ〜〜〜 うん ・・・ そだね〜〜〜 」
えへ ・・・ あの時は
ふつうのお家 だったよね〜〜〜
海の側の 崖っぷちの 不思議なお家・・・
「 さ 入りますよ。 えみちゃん お行儀よくしてね?
静かにできるわね 」
「 うん ・・・ ねえ パパ は 」
「 大丈夫。 パパは ・・・ 強いから 」
きゅ。 ママはまた エミの手をしっかりと握った。
そこは ― 本当に 病院 だった。
白衣を着たオジサンは 海運事故の巻きこまれた と言った。
「 そ それで ウチのヒトは 」
「 奥さん ご安心ください。 御主人は命に別状はありません。
今は 麻酔で落ち着いていられますが 」
「 あ ああ そう よかった ・・・ 」
「 しかし ― ただ そのう 」
「 ・・・ はい? 」
「 右脚の損傷が激しすぎて 」
「 ! そ それは ・・・ 」
「 パパ! パパは ??
ねえ ママ、 エミ パパの側にいってもいい? 」
「 静かにできる? 」
「 うん!!! ねえ パパのお手手 握ってあげるの 」
「 ・・・ お願い エミちゃん 」
「 うん! 」
エミは そうっとそうっと・・・ パパの病室の中に入っていった。
「 ・・・ ! ( パパ ! ) 」
エミのパパは いつも笑顔でいつも強いパパは ―
ベッドの中で 青い顔をして目を閉じていた。
なんだか いろんな管やら 線が パパの身体に付けられている。
「 パ・・・ ( あ 静かにしなくちゃ ! ) 」
エミは慌てて口を閉じ シーツの上に投げ出されたパパの手に
そう・・・っとさわった。
あ。 あったかい ・・・・!
いつものエミのパパの手だ!
パパ! エミが げんき あげる!
そうっとそうっと・・・ 大きな手を撫でていたエミの指が きゅ っと
握り返された。
「 え?? ・・・! ぱ パパ ・・・ ! 」
びっくりしてパパを見ると ― パパは目を開けていた。
「 ・・・ え み ・・・ 」
「 ! パパ!!! ・・・ あ ごめん ・・・
し〜〜〜 ってしないとダメなんだよね 」
「 ・・・ いいんだよ ああ エミの手 ・・・ あったかい 」
「 うん! ね パパ。 エミが 元気 あげるから!
パパ パパ 元気になって! 」
「 ・・・ ああ ありがとう エミ ・・・ 」
「 うん! 」
パパの笑顔は なんとなくぎこちなくて
いつもの わっはっは・・・って笑顔じゃなくて。
エミはどきどきしてしまう。
「 ! ママ 呼んでくる? 」
「 ・・・ エミ ここにいてくれるかい 」
「 うん! 」
「 エミの手 ・・・ パパの 痛い を消してくれるんだ 」
「 ・・・パパ ・・・ いたい の?? 」
「 ああ ちょっと ね。 でも エミの手があるから 」
「 パパ! エミの手でなおしてあげる! 」
エミは 両手でパパの手を包んだ。
突然 ドアの外で人の声が聞こえた。
大きな声ではないし ゆっくりとした話し方なのでエミも怖くはなかった。
ママとお話をしている ・・・ みたいだ。
「 ? どなた ・・・ ですって ? 」
「 奥さん この方をご存知ですか 」
「 ? 」
白衣のお医者さんが案内して来たヒトは ―
病室の前には 白鬚を蓄えた温厚そうな紳士が立っていた。
「 ! まあ ギルモア先生・・・! お久しぶりで 」
「 ミセス・サトナカ。 お元気ですか。
今 コトは急を要します。 決断して頂けますか。 」
「 は はい ・・・? 」
「 ご主人の脚ですが。 < 新しい脚 > を
お望みでしょうか 」
「 あたらしい あし? ・・・! 義肢 ということですか 」
「 少し違いますが 概念的には合っています。 」
「 その あし で ・・・ 主人は 」
「 普通の社会的な生活は完全に保証します。
そして < 仕事 > の方は ご本人の決断によりますが 」
「 ― それは ・・・ 本人に直接 訊ねてください。 」
「 よいですか 」
「 はい。 彼の サトナカヨウヘイの 人生です。
彼に選択・決定の権利があると 私は思います 」
「 わかりました 」
入ってもいいですか? と紳士は医師に尋ねた。
「 どうぞ。 ― お願いします。 」
「 ありがとう 」
彼は ドアを開けゆっくりと部屋に入った。
「 ミスタ・サトナカ。 お久し振りですな 」
「 ! ギルモア先生 ・・・ ! 」
パパも びっくりした顔をしていた。 どうしてここに 」
「 貴方の事故について 情報を得ました。 その件について
ご相談があります。 」
「 ― はい 」
「 エミ。 いらっしゃい 」
「 ・・・ はい ママ 」
「 あ ミセス。 お嬢さんも よろしければこちらに
いらしていただけますか 」
娘の手を引いて 部屋を出ようとしたサトナカ夫人を
紳士は 穏やかに引き留めた。
「 貴方も その方がいいでしょう? ミスタ・サトナカ 」
「 ― はい 先生。」
エミのパパは しっかりとした声で答えた。
「 エミ。 ママとここにいてくれるか 」
「 パパ! はい 」
エミははっきりとお返事をし こっくりと頷いた。
そして ママの手を引いてお部屋の隅にいった ― パパの顔がよく見える。
「 ― では お話しましょう 」
「 はい。 伺います 」
― しばらく難しい話が続き エミにはよくわからなかった。
しかし 最後にパパははっきりと言った。
「 お願いします。」
「 ありがとう。 私共に任せてください。 」
いつの間にか 老紳士の後ろに黒人の青年が立っていた。
「 彼が全面的に補助をします
私のラボをこちらに出張させ ― 処置を行います。 」
「 ミスタ・サトナカ。 お久しぶりです。
僕がサポートに入ります。 ・・・ 海はいつだって味方です 」
彼は ばちっとウィンクをした。
「 ! ああ ・・・ ありがとう! 」
あ!! 海のおにいちゃん だ!
エミは思わず手を振ってしまいそうになり 慌てて自分の手を押さえた。
そんな彼女に気づいてか 青年は笑顔で小さく手を上げてくれた。
う わああ〜〜〜〜
エミのこと、覚えててくれたんだ?
海のおにいちゃん !
エミはなんだかお腹の底から ほわ〜〜ん と温かくなってきた。
< みなさん > が、 エミがよおく知っている・あのヒト達が 来てくれた。
パパは 大丈夫。
ぜったいに よくなる わ!
「 ギルモア先生。 」
パパは しっかりした声で話した。
「 その < 脚 > で また潜れますか。
今までのように 深海まで降りられますでしょうか 」
「 可能です。 細かい調整は必要でしょうが・・・
それは 彼に任せましょう 」
老紳士は ぽん、と黒人青年の肩を叩いた。
「 ― お任せを。 僕はその方面を担当します 」
そうですか ・・・ と しっかりと頷くと
サトナカ氏は ゆっくりと身体を起こした。
「 ! あなた ・・・ ! 」
夫人が駆け寄ってきて 彼を支えようとしたが
彼はそんな妻の手を やさしく抑えた。
「 大丈夫だよ。 お前も一緒に聞いていておくれ 」
「 ええ わかりました。 」
夫人は すっと背筋を伸ばすと 夫の脇に寄り添った。
「 ギルモア先生。 ピュンマさん。 聞いてください。
― 俺は いや 私は。 まだまだ働かなければならんのです。
今年の内に 次のコドモが生まれます。
これからも妻子をしっかりと支えてゆきたい。
― 新しい脚 を お願いします 」
「 承知しました。 」
老紳士は力強く頷いた。
ザワザワ −− カタン。 ゴトゴト
少しの間大人たちは事務的な話をしていたが
やがて ドアが開き大きな荷物を持った青年が入ってきた。
「 ― 必要な機材は これで全部です 」
「 ありがとう ご苦労さま ジョー 」
「 いえ。 やあ エミちゃん。 覚えているかい? 」
彼は エミに親し気な笑顔を向けてくれた。
茶色の髪の間から 優しいひとみがエミをみてくれている。
「 !! ジョーおにいちゃん〜〜 !! 」
エミは ぴょん っと彼に飛び付いてしまった。
「 エミ。 」
ママが 少し厳しい声をだした。
「 あ ・・・ ご ごめん なさい ・・・ 」
「 いいんですよ。 さあ エミちゃんと お母さんも
ちょっと外にでましょうか 少し休みましょう 」
「 ・・・ でも あの ・・・ ウチのヒトの治療が ・・・
こちらでの入院も長くなるでしょうから ・・・ その相談も 」
「 ああ ウチの博士が仕切りますから。
明後日には ― 全てが変わっていますよ。 」
「 え あ 明後日 ?? 」
「 そうです。 明後日になれば 新しい局面が拓けます 」
「 ・・・ そ そうなんですか ・・・? 」
「 エミちゃんのお母さん 貴女の顔色の方が心配です。
さあ 隣の部屋のソファで休まれたほうがいいですよ 」
「 ・・・ え でも 」
「 う〜ん ここは女性に任せた方がいいなあ
フランソワーズ〜〜〜 頼むよぉ〜〜 」
彼は 戸口から外に向かって声をかけた。
「 ― はい 」
コトン。 静かに金髪の若い女性が入ってきた。
「 ! フランソワーズおねえちゃん!! わ〜〜〜〜 」
「 えみちゃん 大きくなったわね〜 」
「 えへへ エミね もう三年生なんだよ〜〜 」
「 そうなの? パパのご看病に来たのね 」
「 ウン。 ・・・ パパ 元気になれる? 」
「 大丈夫。 元気になれるわ。 エミちゃん 励ましてあげてね
ミセス・サトナカ。 少し御休みくださいな
ずっと緊張していらして ・・・ お辛いのではありませんか 」
金髪の女性は さり気なくエミのママを ソファに誘った。
「 ・・・ あ ありがとう ございます 」
「 お身体、大切になさってくださいな さあ おかけになって 」
「 ・・・ あ ・・・ 」
今まで気丈に振舞っていたサトナカ夫人は ソファに腰を落とすなり
両手で顔を覆ってしまった。
「 ! ママ〜〜〜 ママ ! 」
「 エミちゃん このタオル、ママに渡してあげて?
そして 側にいてあげてちょうだい 」
「 うん おねえちゃん! ママ〜〜〜 泣かないで 」
「 ・・・ エミ ・・・ ああ エミ 」
「 エミ いるよ! エミの元気 あげる 」
「 ・・・ エミ ちゃん 」
エミのママは 彼女の娘を きゅう〜〜っと抱きしめた。
「 フラン ・・・ 」
「 大丈夫よ。 この病院の産科の先生に連絡を取っておいたし
心配するような状態ではないって。
でも 大事にしなくちゃ ・・・ 」
「 そっか! ありがとう! 」
「 ・・・ お母さん って。 強いのね 」
「 ウン。 ミスタ・サトナカ を支えているのは 」
「 そうよ。 あの奥様とエミちゃん。 家族よ 」
「 いいなあ〜〜 ・・・ ぼくも そんな家族、欲しい な 」
「 そうね 家族ってステキ 」
「 ウン。 ・・・ ぼく。 そのう〜 きみと さ 」
「 え? 」
「 うん あの さ。 実は さ 」
「 はい? 」
「 あ〜〜 ・・・ 『 月がキレイですね 』 」
「 はあ??? ・・・ あのう 今 お月様 みえる??
ジョー 大丈夫 ? 」
「 い いや そのう〜〜〜 」
「 フランソワーズおねえちゃん ! 」
ぴょこん、とエミが二人の間に顔をだした。
「 あのね おねえちゃん。 ジョーおにいちゃんはね〜〜
フランソワーズおねえちゃんがすき! って言ってるだよぉ〜〜 」
「 エミちゃん ・・・ 」
「 あ あのう〜〜。 聞いてください フランソワーズ 」
・・・ ジョーは 一世一代の 勇気 を振り絞った ・・・ !
( いらぬ注 : 明治の某大文豪は I love you を
『 月がキレイですね 』 と訳された ・・・ とか・・・ )
― そして < 明後日 >
そう 全ては 変わっていた。
サトナカ氏は 爽快な気分で目覚めた ― いつものように。
「 ふぁ〜〜 ああ 気持ちのいい朝だあ〜〜〜
!!! お オレの 脚 ??? 」
なんの違和感もない自分自身の身体に 彼は仰天し
おそるおそる ブランケットを持ち上げ ― 自分自身の脚 を見た。
そこには ―
包帯でぐるぐる巻き、数本の管が取り付けられている右脚 ・・・ ではなく。
いつもの、 愛用のパジャマを穿いた いつもの彼自身の両脚が
ぽ〜〜ん ・・・と 気楽にシーツの上に投げ出されていた。
「 ! う ウソ ・・・ だろ?? 」
なんの苦労もなく 上半身を起こし、そう〜〜っとパジャマのズボンを
引き上げてみた。
「 ・・・ え! これ 俺の脚 ・・・ 俺の右脚 だ ?? 」
あの時 ― ぐちゃぐちゃ になったはず だった。
激痛の中 自分自身でも もうこれはダメだ、と覚悟していた。
命が助かれば めっけもん と 割り切った ― はずだった。
それが ―
「 ・・・ あ これが 義肢 か??
え 足の指も動くぞ? 足首も 膝も ・・・ 自由に動く !!!
俺の意志通りに 動く !! うごく ぞ !! 」
コンコン ・・・ カチャ。
軽快なノックと共に 彼 が顔をだした。
「 おはようございます。 やあ もうお目覚めですね 」
「 あ ああ ピュンマさん! ・・・ 俺の 脚 が 」
「 如何です? なにか違和感がありますか 」
「 !!!! 」
サトナカ氏は ぶんぶんと首を横に振る。
「 そうですか それはよかった。
ああ 歩いてもかまいませんよ? そうだ 一緒に体操でもしましょうか
・・・ ラジオ体操 そういうのがこの国にはありますよね? 」
「 あ 歩いても??? 」
「 はい。 なんなら走ってみますか? 」
「 ・・・ いや まず ・・・ 」
「 あ〜 海に入るのは もうちょっと そう 2〜3日待ってください。
貴方の 身体が < 慣れる > まで ね 」
「 に 2〜3日!?? そ それで また 潜れる・・?
あの 以前と同じように ・・? 」
「 はい 保証します。 あ〜 ただ微妙なバランス調整が必要ですから
僕が ご一緒します、ご自身でチェックしてみてくれますか 」
「 も もちろんです!!!
・・・ また 潜れるなんて! う 海に ・・・ ! 」
「 海が 待ってます。 」
「 はい! 俺が出来ることを 最大限に努力します ! 」
バサ。 ・・・ ストン。
サトナカ氏は ブランケットをきちんと畳むと すっく・・・と
床に降り立った。
「 ・・・ ・・・ ! 」
「 如何ですか。 違和感がありますか。
特に 左脚とのバランスに集中してみてください 」
「 はい。 」
トン。 トントントン。 バンッ !
氏は パジャマのまま足踏みを始め どんどん軽快になってゆき
最後に どん ・・・ と右脚で床を力強く踏みしめた。
「 ・・・・ 」
「 どうですか 」
「 ― 俺の脚 右脚 です。 長年の相棒が ・・
ああ 蘇ってきました ! 」
「 それはよかったです。 接合部に違和感 ありますか? 」
「 それってなんですか? という気分です。
あ〜〜〜 ちょっと長く寝過ぎたなあ〜 って二度寝の朝 みたいだ ・・・ 」
「 ははは そりゃ 〜 最高ですね 〜〜
今日は一日、日常動作の確認をお願いします。
左脚とのバランスは どうです? 」
「 地上では 全く以前と同じです。 ・・・ うん うん ・・・
ああ はやく 海に入りたい〜〜 」
「 僕も久々に日本の海に潜りたいですよ。
この辺りのお勧めスポットを 案内してください 」
「 喜んで! ・・・ 極秘ですが 深海渓があるんですが
ご案内します。 う〜〜〜 腕が いや 脚が鳴ります! 」
病室は とても病室とは思えない明るい笑いで満ちた。
― 数十分後 少し離れた病棟で。
トントン ・・・ 遠慮がちなノック そして。
「 あ〜〜 俺です。 入ってもいいかな 」
ドアが開き サトナカ氏がひょこん、と夫人の病室に顔をだした。
「 ! あ あなた ??? 」
「 やあ おはよう。 ああ 顔色、 よくなったな 」
「 ・・・ あなた ! あ 歩いていらした の? 」
「 うん。 ほら 見てくれ 」
こつこつこつ とんとんとん 軽快な足取りで彼は歩く。
「 すご・・・ い いつものパパの歩き方 だわ ・・・ 」
「 だろ? あ なあ お前、お腹のチビは 」
「 大丈夫。 しっかりしがみついててくれてるわ。
ふふふ さすが サトナカヨウヘイの子よ 」
「 そうか〜〜 よかった!! あ エミは 」
「 ええ あの < おうち > の方々が ・・・・
どうぞって 言ってくださって・・・
フランソワーズさんのお部屋に お泊り よ 」
「 − そうかあ〜〜 ありがたいなあ ・・・ 」
「 あなた。 いつものパパだわ 」
「 うん。 俺自身 夢みてるみたいだけど。
この脚 ― ドクター・ギルモアから頂いたこの右脚 ・・・
俺は 一生一緒に生きてゆく 」
「 ・・・ ああ ああ 本当に夢みたい 」
「 ああ なんて御礼申し上げたらいいか ・・・ 」
「 あなた。 これからもどんどん <潜って>。
その 脚 を使って。 皆のために 困っているヒトのために 」
「 おうよ。 もうとっくに決心してるさ 」
「 うふふ そう言うと思ったわ。
私はね この子が無事生まれて 手を離れたら
― 病院のお手伝いをするわ!
先生や看護師さん達に美味しいご飯を作るの 」
「 あ それはいいなあ 」
「 でしょ? 私たち 張さん にばっちり習ったわ! あの旅で 」
「 ― やるな お前! 」
サトナカ夫妻は がっちり握手を交わした。
カリカリカリ。 ぱさ〜〜 ゴシゴシ
サトナカエミは 熱心に勉強している。
宿題はもうとっくに 完璧に! 終わらせてしまった。
今 取り組んでいるのは < じゅけんべんきょう > なのだ。
「 え〜みちゃん? あ ごめんなさい お勉強中だった? 」
ドアから 笑顔の金髪美女が顔を覗かせた。
「 うん あ おねえちゃん、ジョーお兄ちゃんは? 」
「 ここにいるよ〜〜〜 」
後ろから茶髪の青年も加わった。
「 あのね エミちゃん。 一番最初にね エミちゃんに報告するわね。
あの ね。 おねえちゃん、 次の六月にね 結婚するの 」
「 わ〜〜〜〜〜 あ ジョーおにいちゃんと そうでしょう? 」
「 えへ ・・・ そ そうなんだけど 」
お姉ちゃんは にこにこ お兄ちゃんは 真っ赤だ。
「 わ〜〜〜 よかったね〜〜〜〜 」
「「 ありがとう エミちゃん 」 」
「 あのねえ エミね おねえちゃん になるんだよ〜〜〜 」
「 そうなんですってね よかったわね〜〜 」
「 ウン。 それで ね。 聞いて おねえちゃん おにいちゃん 」
「「 うん なあに ・ なんだい 」」
「 あのね。 エミね。 大きくなったら お医者さん になる !
パパみたいにね ケガしたヒトを 治すの! 」
「 わ〜〜 すごい ・・・ 」
「 すごいなあ エミちゃん 」
「 エミ。 がんばる。 エミのパパもママも 頑張るから エミも。 」
幼いながら サトナカエミ は凜とした顔で決意を述べた。
― この後 サトナカヨウヘイ氏のますます勇敢で果敢な潜水士としての活躍が始まる。
無謀と勇敢は 全然ちがう。
彼は 入念・緻密な調査・準備をし どんなに厳しい状況の下でも
果敢にチャレンジをし ― 多くの成果をあげた。
彼の協力で救助できた命は 数しれない。
「 自分は ― 自分にできることをしているだけです
海は いつも 俺を応援してくれますから 」
彼はいつも静かにそう語っていた。
彼の妻は 医師や看護師たちの食を応援し 娘は形成外科医をめざし
息子は義肢について勉強をしている。
後年 サトナカ氏は 高齢になり亡くなる前に 自分の <右脚> を息子に託した。
彼の息子は すでに優れた義肢技工士として名を馳せていた。
「 いいか。 これを お前に残す。
コレを徹底的に研究して ― 後に続くモノに残せ。
脚 を失った人々に 新しい脚 を。 新しい人生を 希望を。
それがお前の サトナカヒロシ の。 この俺の息子の 使命 だ 」
「 はい。 お父さん。 」
息子は しっかりと頷き父の手を握りしめた。
エミは成形外科の名医に 弟・ヒロシは屈指の義肢技工士になる
サトナカ一家は < みなさん > から 習ったモノを
しっかりと受け継ぎ ― 世の中に広めたのだった。
****** オマケ その一 *****
「 え ま〜たアイツら やってるわけ? 」
「 そうなんですよ もう〜〜〜 何回注意しても無視されて 」
「 ふん。 病室で賭け事なんて いい度胸だわよ!
いいわ アタシが行くから 」
「 ・・・・ さ サトナカ先生?? 」
「 ・・・ すんげ〜〜〜 あのセンセ! 」
「 プロ だぜ〜〜〜 」
こっそり、いや 堂々と?病室でギャンブルをするばくち狂いの不良患者らが
皆 顔面蒼白 舌を巻いた。
ポーカーも 花札も およそ 全てのカード・ゲームは
サトナカ先生の 独り勝ち なのだ。 ヤツらはスッテンテンになり★
このオバサン先生に平伏した。
「 ふん。 こんなチンピラどもに NY ウェスト・サイド仕込みの
超絶イカサマ が見破れるわけ ないのよ ふふふ〜〜〜
ね〜〜 ジェットおにいちゃん(^^♪ 」
サトナカ先生は かんらからから・・・高らかに笑うのだった。
***** オマケ その二 十数年後 ― *****
「 サトナカ先生。 今年の研修医さんたちです〜〜 」
「 ふ〜ん ぴよぴよ共かあ ・・・ あれ?? 」
「 はい? なにか サトナカ先生 」
「 え ・・ ジョーおにいちゃん・・? ま まさか 」
「 はあ?? 」
「 あ あ〜〜〜 あの イチバン後ろの。
あ〜〜 あの金髪は ・・・ 外国人 ? 」
「 え? あ〜〜 彼 ニホンジンですよ。 お母さんがフランス人で
二ホン生まれ日本育ち えっと・・ シマムラすばる です 」
「 ! 」
そっか〜〜〜〜 !!! そだね!!
この世界に来てくれたんだ ・・・!
よぉし よしよし ・・・
アタシが 腕に縒りをかけて シゴいたるわ♪
エミにできる恩返し だからね〜〜〜〜
ねっ!!!
ジョーおにいちゃん フランソワーズおねえちゃん
・・・ < みんな > !!!!
サトナカエミ は に〜〜んまり 笑った。
************************ Fin.
*********************
Last updated : 05.02.2023.
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*********** ひと言 **********
原作 あのお話 は よくわからないです、後半とか。
で 大妄想話 にしました (^_-)-☆
【島村さんち】 で すばる君は お医者さんになります♪